謎の多い出雲大社ですが、数ある神事の中でも秘儀中の秘儀とされるものがあります。それが今回ご紹介する神幸祭(じんこうさい)です。

神幸祭というのはどこの神社にもあります。普段お社に鎮座する神様を、お神輿に移し、氏子が暮らす街を一周する。というような、いわゆるおみこし行列というものがそれです。

しかし、出雲大社のそれは別名を身逃げ神事と呼びます。

この身逃げに隠された意味とは!?

さっそくご紹介していきましょう!

 

身逃げ神事の概要

身逃げ神事とは、8月10日から始まります。14日が本番ですが、そのためには入念な準備が行われるのです。

 

8月10日の潔斎

身逃げ神事にあたるのは宮司さんではなく禰宜(ねぎ)さん。出雲大社の神職ではNo.3にあたります。

10日の朝から斎館に籠り、外界との接触を避け、穢れを祓うことに専念します。これは他でもない、大国主命をその身に降ろすため。

忌火と呼ばれる火によって調理された食事のみを食べます。

 

8月11日の禊

11日の夕方、稲佐の浜で海水に浸かり、穢れを祓います。そしてまた斎館に戻り、前日と同じ潔斎を続けます。

 

8月12日の潔斎

引き続き潔斎は続きます。禰宜さんはいよいよ潔斎が完了し、いつでも神を降ろせるようになっていきます。

 

8月13日の道見

本番を翌日に控えた13日には、いよいよ明日歩くルートの下見である、道見(みちみ)が行われます。

本番では絶対に失敗が許されません。大国主命を降ろした状態で失礼があってはならないのです。

巡行ルートは出雲大社〜湊社〜赤人社〜稲佐の浜の塩搔島です。

湊社は出雲大社の境外摂社でもあります。

 

8月14日の身逃げ神事

深夜1時、いよいよ本番です。

狩衣姿に着替えた禰宜が青竹の杖と、真菰(まこも)で作った火縄と苞(つと)を持って出発します。

前日下見したルートの通り巡行し、塩搔島で翌日の神事のための塩を焼きます。

もしここで誰かに出会ってしまったら、神事は最初からやり直しになります!

最後は国造家の祭壇には拝礼、出雲大社の本殿にて拝礼となります。

このように誰かに出会わないようにするという事が、穢れを避ける「身逃げ」という呼び名に転じたとされています。

 

8月15日の爪剥祭

つめはぎではなく、つまむぎさいと読みます。

塩掻島にて焼いた塩、稲穂、瓜、茄子、根芋、豆、水の7つの神饌を大国主命にお供えし、神事は終了となります。

 

逃げ神事で立ち寄る神社

 

湊社(みなとのやしろ)

大国主命の専属料理人である櫛八玉神(くしやたまのかみ)をお祀りしています。詳しくはこちらの記事に書いています。

国譲りが成立した後、神々を料理でもてなし、国の和平を成功させた神様です。

 

山辺神社(通称:赤人社)

山辺赤人をお祀りする神社です。奈良時代に三十六歌仙の一人と謳われた和歌の名手。しかし、なぜこの神社に立ち寄るのか・・・

 

塩掻島(しおかきじま)

かつては海に浮かぶ島だったのですが、稲佐の浜の海岸線は砂の堆積によってどんどん拡大しており、その影響で陸地に上がってしまいました。この島で掻き出された塩が大国主命に献上されるのです。

 

身逃げ神事に関わる別火氏とは⁉

湊社も赤人社も実は別火氏という氏族が管理している神社であり、古来身逃げ神事とは別火氏が行う神事だったのだそうです。

別火氏とは出雲大社の神主家系であり、

その先祖は山辺赤人、神代では櫛八玉神までつながっているのです。

現代では身逃げ神事を禰宜が行うようになりましたが、神事の流れ自体は古式に則り、別火氏が行っていた通りになっているのでしょう。

 

ちなみに別火という言葉の意味を調べると・・・

別火 (べっか)とは日常と忌み、物忌みの状態の間で穢れが伝播することを防ぐため、用いる火を別にすることである。

穢れは火を介して伝染すると考えられており、日常よりも穢れた状態(忌み)から穢れが日常に入ることをさけるため、また日常から穢れが斎戒(物忌み)を行っているものに伝染することを防ぐために用いる火を別にすることが行われた。

 

身逃げ神事を行う人は厳しい潔斎を行わなければならないため、日常使う火とは違う、忌火を使わなくてはいけません。別火氏とはこの大事な忌火を扱う神職だったのでしょう。

 

まとめ

神秘的な身逃げ神事の裏に、別火氏が行ってきた特別なお祀りがありました。年に一度だけ大国主命が大社の外にお出かけになるというのも不思議です。

別火氏の神社や稲佐の浜を巡り、どんなことをなさっているのでしょうか?

この疑問は永遠に解き明かされることはありません。だって、見てはいけない神事なのだから・・・

 

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